イントロダクション

誰もが、本音と建前の間で、生きている。

福井県大飯郡おおい町。2006年に大飯郡大飯町と遠敷郡名田庄村が合併し誕生した。人口8,700人、海と山に囲まれた小さな町。住民はこの地に建設された大飯原発と折り合いをつけながら生活してきた。しかし、2011年に起きた福島第一原発事故は、その暮らしに大きな影を落とす。2012年、世論を二分するなか大飯原発の再稼働が伝えられると、おおい町は日本全国から注目を浴びる。押し寄せるマスコミ、誹謗中傷の電話、そして、町を揺るがす町長選が行われることとなる—。本作は、原発問題の渦中におかれた町を訪ね、そこに暮らす人々との対話を試みた。変わってしまった暮らしと、変わらない風習。やがて静かに語られた言葉、その姿から、いまこの国の抱える問題が浮かび上がってくる。

監督コメント

これは、「反原発ドキュメンタリー」ではないつもりです。
僕個人は「反原発」ですが、反原発を訴えるドキュメンタリーをつくることで、原発が内包する巨大な問題に迫れるとは思えませんでした。
この映画には、とても多くの事柄が映っています。原発とは無関係な風景、食べ物、唄、信仰、そして無数の言葉たち。
何事もなかったように日本中の原発が再稼働に向かう現在、その渦中で暮らす私たち自身を改めて見つめるために、もう一度真正面から混乱したいと思います。

川口勉


フリーランスの映像ディレクター。1983年神奈川県川崎市生まれ。東京のテレビ番組制作会社に勤務し、NHKや民放各局のドキュメンタリー、歴史番組、音楽番組などの演出を手掛ける。独立後の現在、テレビ番組のほかCM、企業イメージムービーの制作・演出も行う。

寄せられたコメント

送電鉄塔、民宿や旅館、そして立派な道路。原発がある町の日常が淡々と映し出されていく。やがて、住民たちの笑顔の底に不安や恐怖が貼りついているように思えてきて、鳥肌が立った。

川上 武志元原発労働者/『放射能を喰らって生きる』著者

原発とは何か。それは視点によって様々だ。決して一つではない。でもそれが一つであるとの思い込みから争いが起きる。この映画は地域の様々な視点を示してくれる。ただし本筋はこれを撮る川口勉の視点だ。そして川口が示したその視点は、僕にとってとても大切な視点だった。

森 達也映画監督 作家

曖昧で小さな声。マスコミが編集で切り落とす声だ。でもその声は、例えば反対の立場の人間の気持ちも想像してみる、そういう風に揺れることもある。本当はそこにしか未来がないことを、本作は静かに教えてくれる。

寺尾 紗穂音楽家 文筆家

登場するおおい町に住み、暮らしを営む人びと、ひとりひとりに何故か見おぼえがある。そう、これは「彼ら」ではなく、まぎれもない『ぼくらのXX』についての、痛切なドキュメンタリーなのだ。

佐藤 信劇作家 演出家

原発のある街に住む人たちがいるわけではない。原発のある国に住む人たちがいるだけだ。もしも彼らの生活や人間性を批判する人がいたら、それは、そのまま私もふくめてこの国に住む全員に向けられているのだ。 「彼らの原発」は「僕らの原発」なのである。

三上 寛シンガー・ソングライター

共同体の中に入ってリアリティに迫るという点で、ジョー・サッコの『パレスチナ』を連想した。 冷静な議論のためには欠かせない視点の作品だと思う。

小崎 哲哉『REALKYOTO』発行人兼編集長

スタッフ

製作・監督・撮影・編集/川口勉 音響構成/渡辺丈彦 スタジオ技術/東凌太郎 資料提供/福井新聞社 北陸政界 歌/「おもん花」三上寛(作詞・作曲/三上寛) レコーディングミックス/島田正明(アケタズ・ディスク) レコーディング協力/アケタの店 宣伝/contrail デザイン/藤本三千代
2017年/日本/119分 配給/『彼らの原発』上映委員会

上映情報

東京 K's Cinema 03-3352-2471 10月20日(土)~上映終了
神奈川 横浜シネマリン 045-341-3180 11月3日(土)~上映終了
大阪 第七藝術劇場 06-6302-2073 2月2日(土)~上映終了
福井 メトロ劇場 0776-22-1772 3月9日(土)~3月15日(金)
鹿児島 ガーデンズシネマ 099-222-8746 3月10日(日)~3月13日(水)
愛知 名古屋シネマテーク 052-733-3959 近日公開 

問い合わせ先

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『彼らの原発』上映委員会
TEL 03-6452-9930(33 BLOCKS内)
E-mail somebodysnpp@gmail.com